カンロ、キャンディの新たなユーザー創出を視野に各事業が本格始動、Z世代向けや創業110周年を記念した施策も
カンロ飴やピュレグミなどでおなじみのカンロは、7月29日に2022年中間決算説明会を実施し、キャンディの新たなユーザー創出を視野にした各事業の展開や、創業110周年を記念した施策について発表した。キャンディの新たなユーザー創出に向けた取り組みとしては、今期下期から各事業がニーズ掘り起しや市場開拓に本格始動するとのこと。具体的には、現役高校生とタッグを組み、Z世代向け施策を展開すると発表した。さらに「アメージングカンロ」を始動。第1弾はラムネ商品が登場することも明らかとなった。
まず、カンロの阿部一博常務が中間決算について報告した。「1~6月度の錠菓・清涼菓子市場は減少したが、各チャネルでの販売は回復傾向にある。こうした中、売上高はグミの大幅伸長によって増収となった。損益状況も上期として最高益を記録。売上総利益は、増収要因に加えて、生産増による売上原価率が改善した。販売費および一般管理費についても、増収による変動費の増加、人財・広告投資費用が増加した。営業利益・経常利益は、限界利益増加が諸経費増加を上回り大幅に増益した。その結果、四半期純利益は、株式売却益の反動減はあるものの大幅増益を達成した」と、好調だったと報告した。
次に、カンロの三須和泰社長が、今期下期のトピックスについて説明した。「キャンディメーカーとしてトップシェアを誇る当社は、昨今のグミブームの後押しもあり、直営店ヒトツブカンロの『グミッツェル』や、グミ製法を応用したマシュマロの『マロッシュ』など、話題となる様々な商品を展開してきた。近年は新たなターゲットである“Z世代”への発信も積極的に行い、グミだけでなくキャンディにおいても多くの商品を生み出し、新規層にも好評を得ている」と、好調要因について分析する。
「当社では、昨年に発表した『KanroVision2030』の実現に向けて事業活動を行っており、今年下期においては、『KanroVision2030』達成のために、長期目線でニーズの掘り起こしや市場を開拓すべく、コア事業、デジタルコマース事業、グローバル事業、フューチャーデザイン事業の4つの事業において、具体的な取り組みに着手する」と、ニーズ掘り起し、市場開拓に各事業が着手するとのこと。
「コア事業では、現役高校生とタッグを組み、注目を集める“Z世代”との共創による商品開発がスタートする」と、若年層へのアプローチを強化すると意気込む。「当社では、グミの製法を応用したマシュマロの『マロッシュ』をはじめ、昨年からZ世代を狙った商品を積極的に発売し好評を得ている。Z世代とは1996年以降に生まれた世代を指し、その発信力などから、各業界から注目を集めている世代だが、キャンディ市場においては、Z世代による購買は少なく、特に飴に関しては、全くといっていいほど興味を持たれていないのが現状だ。しかし、Z世代がキャンディ市場の次世代を担うターゲットであることは間違いなく、これまでの当社の成功事例から得た知見を活かし、秋以降も積極的な商品展開を通じアプローチしていく」と、キャンディ市場の活性化に不可欠なZ世代を取り込む施策を打ち出していくと説明する。
「さらなる市場の開拓として、コア事業では、キャンディの次世代ユーザーであるZ世代との共創をスタート、Z世代の中でも若年層にあたる高校生に着目し、実際に現役高校生とタッグを組み、商品開発を行っていく。一過性の嗜好品ではなく、商品を手にした人の記憶に残るような飴、および体験価値を提供する『Z世代との共創プロジェクト』を始動する」と、高校生のアイデアを反映した商品などを展開するという。「現役高校生との共創は、キャンディの新たなコアバリューの気づきになると考えるとともに、現在マンネリ化している世界のキャンディ市場の活性化においても、キーとなると考えている」と、同社は、次世代ユーザーであるZ世代と共にこれからの時代をけん引するキャンディを創っていく考えを示した。
「デジタルコマース事業では、新ブランド『アメージングカンロ』第1弾商品『ホシフリラムネ』が登場する。今年から立ち上がったデジタルコマース事業本部は、単にEコマースを行う部門ではなく、チャネルに捉われない購買体験の提供、いわゆるOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)を目標としており、4つの方向性で事業を進めている」とのこと。「デジタルコマース事業部の4つの方向性として、ヒトツブカンロでは、キャンディをギフトに、をキャッチフレーズに展開する直営店を展開。既存ブランドの活用では、今年7月20日にローンチしたカンロ初の商品サブスクリプション『ポケサブ!』などを展開している。機能性や素材を活かした商品開発では、糖が脳のエネルギーになることから着想を得て、eスポーツプレイヤーと共同開発した『BRAONグミ』などカンロの開発方針に則ったオリジナル商品の開発。そしてキャンディのもつ可能性の提案も行っていく。4つ目の事業の方向性にあたる『キャンディのもつ可能性』の提案として、今回カンロでは、デジタルの強みを生かし、驚きの体験を提供することで、キャンディが持つ本来の魅力を再認識、キャンディの存在価値を上げる取り組み『アメージングカンロ』をスタートする」と、キャンディがもつ伸びしろをさらに伸ばす試みなのだと解説する。
「『アメージングカンロ』は、デジタルの強みを生かし、味わいや食感だけでなく、見た目や楽しさなど、キャンディが本来持つ長所を最大化して、ワクワクする体験をしてもらうシリーズで、第一弾は、“満天の星空を閉じ込めて。”をコンセプトにした、ラムネ商品『ホシフリラムネ』を展開する」と、星空をイメージした瓶に、星型のラムネを自身で入れてもらうことで完成する商品により、まるで自分だけの満天の星空を手元に集めるような特別な体験を提供するという。「星形ラムネが入った瓶を振った時の軽やかな音でも、エモーショナルな世界観を体験することができ、癒しやリラックスを体験できる商品となっている」と、ホシフリラムネは8月30日からKanroPOCKeTにおいて2000円(税込)で発売すると教えてくれた。
「グローバル事業では、中国向けのオリジナルノンシュガー商品を展開する」と、グローバル事業では、年内に中国へのカンロ オリジナル商品の輸出を開始し、海外展開を本格始動するとのこと。「中国へ輸出した商品の現地での販売は、総販売店契約を締結しているAmos社を通じて行っており、現在輸出しているのは、金のミルク、色えんぴつキャンディ、まるごとしぼったのど飴など、日本でも展開している商品となっている。しかし、本格的に中国市場への参入を考えた際に、中国の市場ニーズをとらえた商品を一から作る必要性を感じたことから、新商品ブランドを新たに開発、展開する」と、現在の中国の飴市場において機能価値が注目されていることや中国の糖尿病患者数の増加などの社会背景からノンシュガーのニーズを見込み、新商品は、「ノンシュガーでくつろぎのひとときを」という意味を持たせた「0糖1刻(りんたんいーくう)」(仮)をブランドコンセプトに展開していくという。
「『0糖1刻』(仮)では、日本で実績の高い商品をベースにしつつ、中国のオリジナルレシピで、現地にておいしいと感じてもらえる、味わい珈琲糖と枇杷味糖の2品を展開する。糖類ゼロの機能感とともに、リラックスやご褒美感を感じさせる情緒価値も兼ね備えている」と、「0糖1刻」(仮)が、同社の中国市場への参入の大きな節目になると、期待していると述べていた。
「フューチャーデザイン事業では、SDGsへの取り組みを事業にすべく、9月から『ヒトツブカンロearth』でエコライン商品を発売する」と、カンロがSDGsへの取り組みを事業に組み込み、展開するフューチャーデザイン事業では、ヒトツブカンロと組み、ヒトツブカンロのサステナブルラインである「ヒトツブカンロearth」を、この秋立ち上げるという。「『ヒトツブカンロearth』では、製造過程で発生する廃棄飴を原料にアップサイクルしたウエットティッシュなど、エコライン商品として、今年9月からヒトツブカンロ店舗で販売を開始する予定となっている」と、具体的なエコライン商品などについて紹介した。
「当社は、創業110周年を迎える。ステークホルダーへの“感謝”を軸に“メッセージ”を発信し、“心がひとつぶ、大きくなる”アクションを実施する」と、11月には110周年施策を発表する考えを示した。