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2011年02月15日

J&J、「特発性正常圧水頭症(iNPH)」診療における介護保険の削減額を試算し発表

 ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー コッドマン事業部は、洛和会音羽病院正常圧水頭症センター所長の石川正恒先生と共同で「特発性正常圧水頭症(iNPH)」(以下、iNPH)診療における介護保険の削減額を試算し、その結果に関する発表会を2月8日に開催した。石川先生が試算結果の発表を行った他、順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長・順天堂大学脳神経外科 教授の新井一先生がiNPH診療の現状について講演を行った。

 「当社では、1998年からiNPH疾患の啓発を継続的に行っている。しかし、まだ疾患の認知が低いため、治療していない患者が多くいる。患者とその家族の笑顔を取り戻すためにも、認知度を高め、治療で治せる患者の手助けを行っていきたい」と語るのはジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー コッドマン事業部の岡光代 事業部長。

 「当事業部は脳神経外科とともに歩み続け、iNPH治療のための微調節型圧可変式バルブシャフトシステムを日本に初めて導入した実績をもつ。それだけに、脳疾患患者およびその家族のQOL(Quality of Life)向上をビジョンに掲げ、患者や医療従事者などをサポートしていく」と、iNPH患者とその家族、および医師達を後方から支援する考えを示した。

 続いて、洛和会音羽病院正常圧水頭症センター所長の石川正恒先生が、iNPH診療における介護保険削減額の試算結果と、iNPH診療による患者とその家族のQOLの向上における期待などについて講演を行った。「iNPHは、頭蓋内に過剰に髄液がたまり、脳が圧迫を受けて歩行障害・認知症・尿失禁などの症状が出る病気」と石川先生。ただ、これらの症状は、高齢になると大なり、小なり見られるだけに、iNPHであると区別する手段はあるのだろうか。「iNPHの歩行障害は、小刻みで、すり足になり、開脚で、不安定なのが特長。認知障害は、物忘れや自発性の低下、作業能力の低下、集中力の低下が挙げられる。排尿障害は、頻尿、尿意切迫、尿失禁だ。これらのどれかしらが表れたら、iNPHを疑う必要がある」と、年齢だけでの判断は決してしないで、それらしい行動などがあったらiNPHではないかと医師に相談して欲しいと訴えていた。

 「iNPHが疑われたら、髄液排除試験(タップテスト)を行う。これは、腰椎穿刺によって髄液を30ml排除、数日以内に症状の改善があれば、高い確率で髄液シャント術の効果が期待できると判断する」とのこと。「そして、実際の治療では、脳室-腹腔シャント(V-Pシャント)もしくは、腰椎-腹腔シャント(L-Pシャント)という髄液シャント術の手術が行われる。これによって、歩行改善や認知障害、排尿障害が改善される」と、iNPHは手術で治せる病気であると強調していた。

 では、iNPH患者は現在どのくらいいるのだろうか。「iNPHが疑われる人数は、日本で31万人もいるという研究結果もある。しかし、iNPHの手術例は年間1500例程度しかない。iNPHの認知度の低さが、多くの患者が受診していない要因であるとみられる」と、患者数は多いにもかかわらず、手術を受ける患者が少なすぎると石川先生は嘆いていた。

 「また、iNPHは歩行障害が症状としてみられる。転倒および大腿骨頸部骨折による寝たきりは、iNPHが原因となっている場合も多数あると思われる」と、iNPHが原因で寝たきり生活を強いられてしまっている高齢者も数多く見られるという「iNPHの治療が進めば、歩行障害が改善され、転倒・大腿骨頸部骨折リスクが低減し、介護者が減少する」と、介護負担にもつながると石川先生は主張する。

 
 「今回、前方視的多施設共同研究の対象患者100名について、治療における介護度の改善によって5年間で介護保険費用をいくら削減することが可能かを試算した。iNPH診療後のモディファイド・ランキン・スケール(mRS)と要介護度区分を相関させ、iNPH診療における改善度による介護保険削減額を算出した結果、対象患者が介護保険支給限度額を利用した場合に、治療費を含めても5年間でおよそ4576億2200万円の削減が可能と推測することができた」という。「また、介護保険の認定率が16%、受給率が82.3%、利用率が48%として、現時点で実質約300億円規模の介護保険の削減が可能であると予測できる」と、iNPH診療によって、患者本人の生活が向上するだけでなく、膨れあがる介護費用の削減にもつながるとのことだった。最後に石川先生は、「高齢化社会を迎える我が国にとって、iNPHの正確な診断と確実な治療は、患者の自立度改善および介護者の負担軽減の観点からも重要だ。さらに、治療にともなう介護費の軽減は社会経済的観点からも有用である」と、iNPH治療に目を向けることの大切さを述べていた。
 
 iNPH診療の現状について講演を行ったのが、順天堂大学医学部附属順天堂医院 院長・順天堂大学脳神経外科 教授の新井一先生。「iNPH治療は、圧可変式シャントバルブの出現によって大きく変わった」とのこと。「しかし、iNPH診断は非常に困難を極めるため、症例が少ないのも実状だ」と、治療技術は進化しているものの、病気を判断する診断技術はなかなか進歩していないと嘆く。「日本では、年間1000から2000例程度のiNPH症例に対して、シャント術が施行されている。この数は、日本におけるiNPHの推定症例数に対して、決して多いものとはいえない」という。「それだけに、今後はiNPHのより的確な診断法および適切な治療法の普及を図ることが、非常に重要な課題である」と、iNPH患者および家族のベネフィット向上にはまだまだ難題がある点も指摘してくれた。

ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニー=http://www.jnj.co.jp/jjmkk/
水頭症.jp=http://www.suitoushou.jp/

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