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2010年03月28日

日本自転車普及協会、自転車を安全・快適に利用するための環境を考える「TOKYOサイクルフォーラム」を開催

 日本自転車普及協会は、健康的で環境にも優しい乗り物として人気が高まっている自転車を、より安全・快適に利用するための環境を様々な視点から考える「TOKYOサイクルフォーラム」を、3月24日に東京・丸ビルホールで開催した。

 昨今、自転車ブームが大きな盛り上がりを見せる一方で、交通事故の増加や交通マナーの悪化、走行空間の整備など、自転車を取り巻く様々な問題が浮き彫りになっているという。今回の「TOKYOサイクルフォーラム」は、こうした現状を再認識しながら改善策を考え、幅広い利用者への新たな提言の場とするべく開催したもの。東京工業大学の屋井鉄雄教授による基調講演を皮切りに、自転車情報誌の編集長でシンガーソングライターのNILO(ニロ)さんによる自転車トーク&ライブ、そしてお笑いタレントで自転車愛好家としても知られる浅草キッドの玉袋筋太郎さんを含めた有識者・サイクリスト5人によるパネルディスカッションが行われた。最後には、自転車のさらなるライフスタイルへの定着を目的に“自転車市民権宣言”を行った。

 まず、基調講演では「自転車が変える道とまち」と題し、屋井教授が国土・都市計画、環境交通工学の専門家としての立場から、今後の交通社会において自動車が担う重要性を紹介。自転車ブームを“ブーム”として終わらせないためには、(1)自転車の都市内走行空間、(2)自転車利用者の車両運転の自覚、(3)自転車政策の継続的推進の枠組み---の3点が必要であると指摘した。

 「自転車配慮型道路の実現に向けて、全国98ヵ所でモデル事業が進められているが、自転車走行空間の整備方針は混乱しているのが実状。歩道を利用するのか、車道を利用するのか指針が完備されていないため、逆に走行環境が悪化しているケースもある。私は、車道上に自転車レーンをひくだけでも十分だと思っている」と、日本だけでなく世界各地の空間整備事例を紹介しながら、自転車は車道を走るべきだと訴えた。

 
 歩道を走ることの危険性については、「細街路と歩道との交差部では“危険な三角形の関係”が存在し、自転車と自動車がお互い止まるだろうと思ってそのまま進むと、両者が衝突する危険性がある」と、歩道走行は安全という認識は誤った理解だという。また、「自転車と歩行者の接触事故が起こりやすいことも大きな問題。高齢者社会を迎える日本にとって、歩行者の安全を守ることは最重要事項だ。とくに、都市中心部では、道路空間の再配分を行い、自動車の走行速度を下げさせ、歩道上とは別に自転車の走行空間を作り、歩きやすい環境整備を進めることが必要」との考えを示した。そして、「自転車レーンがしっかり整備されれば、自転車の利用者が増え、温暖化対策にもつながるだろう。そのためには、自転車に配慮し、自転車を重視し、自転車を楽しむという理念をもった自転車政策を継続的に推進していく必要がある」と、法的枠組みの重要性にも触れていた。

 基調講演に続いて、シンガーソングライターのNILOさんが登場。関西圏を中心にライブ活動を行う一方で、自転車の復権をテーマにしたフリーマガジン「ふたつの輪」の編集長も務めるNILOさんは、「私がスポーツ自転車に出会ったのは3年ほど前。仕事で偶然スポーツ自転車に乗ったのだが、とてもこぎ心地がよくて、今までママチャリしか乗ったことのなかった私の自転車の概念が一気に変わったことを覚えている」と、スポーツ自転車に乗り始めたきっかけを紹介。

 「最初は軽い気持ちで乗っていたが、慣れてくると自転車の乗り方や走る場所が気になってきた。フリーペーパーでは、自転車の楽しさとともに、乗り方のマナーなども伝えるようにしている」とのこと。「自転車人口の増加とともに、駐輪場が増えるなど、全国で街の整備が進んでいる。私もフリーペーパーを通して、こうした動きに微力ながら貢献していきたい」と意欲を見せていた。スペシャルライブでは、ギター弾き語りで、ボサノヴァ風にアレンジされたカバー2曲とオリジナル1曲が披露され、会場全体がNILOさんの透き通った歌声に魅了された。

 次に、「パーソナルからパブリックへ、快適な街づくりを目指して」と題したパネルディスカッションが行われた。このパネルディスカッションには、サイクルライフナビゲーターの絹代さんをコーディネーターに、東京海洋大学海洋工学部流通情報工学科の兵藤哲朗教授、トヨタ自動車 IT・ITS企画部担当部長の亘理章氏、環境ジャーナリストの青木陽子氏、お笑いコンビ・浅草キッドの玉袋筋太郎さんがパネラーとして参加。自転車との関わりを紹介するとともに、日本の自転車環境の改善策などについて徹底討論した。

 芸能界でも屈指の自転車乗りとして知られる玉袋さんは、6年前から自転車通勤を始めたという。「友人に連れられて自転車ショップに行ったのだが、お店に書いてあった“トラック1台分の薬を飲むよりも、1台の自転車に乗ることが健康への近道”という格言を見て自転車を買うことを即決した。それ以来、自転車を乗り続けていたら、今では当時メタボ気味だった体も絞れて、健康診断もE判定がすべてA判定になった。とはいえ、私が自転車に乗っている最大の理由は、晩酌のビールをおいしくするため」と、ユーモアたっぷりに自転車への想いを語ってくれた。

 
 青木さんは、イギリスのロンドン在住で、自転車通勤歴は10年になるとのこと。「私の場合はエコをテーマに自転車通勤を始めた。もともと車の雑誌の編集者だったのだが、温暖化防止のために車に変わるもっといい乗り物はないかと考え、自転車にたどり着いた。自転車は、美容・健康への効果も大きいので夢中になって乗っている」と、エコへの意識をもったことが自転車に乗るきっかけだったという。

 トヨタ自動車の亘理氏は、「小学生の頃、大人の自転車を“横乗り”して感激した思い出がある。そもそも、乗り物は人間力を創造してくれる道具だと考えている。それは、自転車でも車でも同じ。風を切って街中を走る自転車は、オープンカーそのもの。今は、オープンカーの代わりとして、自転車を楽しんでいる」と、自動車メーカーに務めながらも、車と同じくらい自転車のことを考えているのだとか。

 
 兵藤教授は、交通需要分析と施設計画の専門家として、東京海洋大学で交通に関する研究に取り組んでいる。「私は、もともと自転車が好きで、大学時代にはサイクリング部に入っていた経験もある。大学では、都市計画や街作りの中で、交通手段の一つとして、自転車が快適に乗れる環境を研究している。最初は細々と研究していたが、最近では学会の中でも自転車の研究をする人が増えてきた」と、自転車ブームの影響が学会にも及んできたことに驚いていた。

 パネルディスカッションでは、自転車ブームが盛り上がっている一方で、自転車利用者のマナーが守られていないことが各パネリストから指摘された。コーディネーターの絹代さんが「私自身、向こうから走ってくるマナーの悪い自転車に怖い思いをすることがよくある。なぜ、迷惑な乗り方をする人が増えているだろう」と投げかけると、「自転車を使い捨ての草履代わりにしか思っていない」(玉袋さん)、「乗り方のマナーが徹底されていない」(青木氏)、「自転車が安心して快適に走れる場所がないことが問題」(亘理氏)、「自転車に配慮した都市基盤を作る必要がある。そこからルールやマナーが醸成されてくるはず」(兵藤教授)と、それぞれの立場から意見を交わした。

 また、安心・快適な自転車走行に向けた環境整備の実状について、自転車先進国であるオランダ、ドイツ、デンマークの事例が紹介されたほか、兵藤教授からはヨーロッパ各地の自転車レーンの様子、青木氏からは在住するイギリスの最新整備事情、亘理氏からは急速に整備が進む韓国の現状が報告された。

 今回のパネルディスカッションを通じて、各パネリストとも日本の自転車利用者のマナー意識や走行環境整備への取り組みがいかに遅れているかを再認識。「自転車のもつ“美しさ”を取り入れた街作りの研究に力を注いでいきたい」(兵藤教授)、「自転車が街中をさっそうと安全に走れるように、車道への自転車レーンの整備を提案していく」(亘理氏)、「最近、電車で自殺する人が増えているが、自転車に乗ると自分の力を感じて人生が楽しくなる。この気持ちを多くの人に伝えたい」(青木氏)、「これからも多くの人に自転車をすすめていく。すぐに飽きてしまう人もいるが、ぜひブームではなくライフにして欲しい」(玉袋さん)と、自転車に関わる気持ちを新たにしていた。そして、コーディネーターの絹代さんは、「安心して自転車が走れる街作りのために何をしたらいいのか。パネルディスカッションから何かヒントを見つけて、アクションにつながればうれしい」と締めくくった。

 最後に、「TOKYOサイクルフォーラム」に参加した7名が一堂に介し、“自転車市民権宣言”のパネルに署名を行った。自転車を安全・快適に利用できる環境づくりのために、また自転車をライフスタイルの中にさらに定着させるために、これからも積極的に活動していくことを誓っていた。

日本自転車普及協会=http://www.bpaj.or.jp/

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