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2007年09月13日
サントリー、アラキドン酸が脳の器官・海馬の神経細胞増殖に関与していることを確認
サントリー 健康科学研究所は、東北大学大学院医学系研究科 大隅典子教授との共同研究で、生後間も無いラットにアラキドン酸(ARA)を摂取させることによって、脳の器官・海馬の神経細胞が増殖すること(神経新生)を明らかにした。
必須脂肪酸であるアラキドン酸(ARA)とドコサヘキサエン酸(DHA)は、脳を構成する重要な栄養素として知られており、これまでの研究からこれらの必須脂肪酸が脳の機能に重要な働きを果たしていることが明らかになってきている。
多くの神経細胞は誕生前の胎生期に形成されるが、海馬などの脳の一部では神経幹細胞が存在し、成人後も神経細胞の増殖、すなわち神経新生が起こっているという。なお、ARAとDHAは、赤ちゃんの脳を育むうえで重要であることは、これまで数多くの研究報告からも裏付けられており、すでに世界中でARAとDHAが配合されたベビーミルクが販売されている。また、今年7月に開催されたCODEX(国連の合同食品規格委員会)総会では、ベビーミルクの規格で「DHAを配合する場合、同量以上のARAの配合を推奨する」ことが合意され、国際的にもその有用性が認められている。
今回、生後間も無いラットが母乳や飼料を介してARAやDHAを摂取することによって、脳(海馬)における神経細胞はどのような影響を受けるか、その効果を検証した。
試験方法としては、生後2日目のラットを3群に分け、母親ラットの母乳、あるいは飼料を4週間にわたって与え続けたとのこと。生後4週齢時点でラットから脳を摘出し、薄く切った標本(スライス)を作成。この標本を用いて、海馬組織中のある特定の領域(海馬歯状回顆粒層下層)におけるBrdU3陽性細胞の数を指標に、神経細胞の増殖(神経新生)の程度を調べた。また、海馬リン脂質中の脂肪酸分析を行った。
なお、3群は、対照飼料摂取群として、ARA、DHAをいずれも含まない対照飼料を摂取。)DHA飼料摂取群として、DHAを配合した飼料を摂取。ARA飼料摂取群として、ARAを配合した飼料を摂取とした。
神経細胞の増殖(神経新生)の程度を調べた結果、対照飼料摂取群と比較すると、DHA飼料摂取群は神経新生細胞が約1.1倍に増加するのに対し、ARA飼料摂取群は、約1.3倍と有意に増加することがわかった(p<0.05)。なお、海馬リン脂質中の脂肪酸分析の結果、ARAの量が対照飼料摂取群(1.48±0.11μg/mg組織)に対してARA飼料摂取群(1.95±0.12μg/mg組織)の方が有意に増加していることが確認された。
今回の結果から、母乳もしくは食事から摂取しているARAなどの必須脂肪酸が体内に吸収され、その後、脳に移行し、その脳の構成成分に影響をおよぼしていることが明らかとなった。ARAとDHAは、いずれも脳を構成する主要な脂肪酸だが、今回の実験では生後間も無い幼若ラットがARAを摂取することによって、顕著な神経細胞の増殖(神経新生)が起こることを確認した。
なお、神経細胞の分化ステージを確認する免疫染色によって、ARA摂取による神経新生は神経幹細胞の増加の結果として起こる効果であることが示唆されている。
脳の発達には、栄養などの環境要因が関わっていると考えられているが、今回の研究結果はそのことを裏付ける内容であり、ARAが脳を育むという観点からも非常に興味深い知見と考えられる。
今回の研究成果は、神経に関する3学会が合同で開催する「Neuro2007」(9月10日~12日 横浜市)で発表した。
[用語解説]
アラキドン酸(ARA):DHAと同様にからだの中のあらゆる組織を構成する主要な多価不飽和脂肪酸の一種。肉、卵、魚などの一般的な食材に豊富に含まれており、食事から摂取する必要がある「必須脂肪酸」の一つ。また、ARAはDHAと同様に母乳にも含まれており、乳児の成長と発育には欠かせない栄養素であることも知られている。近年、高齢者の脳の働きに非常に重要な働きを果たすことが明らかにされ、脳の栄養素の一つとして注目されている。
神経幹細胞:分裂して自己を複製し、その存在を維持しつつ、神経細胞やその他の脳を構成する多様な細胞へ分化する能力を備えた細胞。海馬では海馬歯状回顆粒層下層と呼ばれる特定の領域に存在するが、加齢とともに減少することが知られている。
BrdU:5-ブロモ-2'-デオキシウリジン。増殖中の細胞のDNAに取り込まれる。免疫学的な手法によって、増殖細胞を検出することが可能となる。
サントリー=http://www.suntory.co.jp/
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