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2007年08月14日
キリンHDと慶應大学、メタボローム解析を活用して酸化防止効果のあるビール酵母の育種に成功
キリンホールディングスの基盤技術および次世代技術の開発を担うフロンティア技術研究所は、慶應義塾大学先端生命科学研究所と共同で「メタボローム解析」(様々な状態の細胞や生体試料に含まれる代謝物質(メタボローム)を網羅的に測定し、細胞の違いやそれらが置かれる環境の違いによって代謝反応がどのように変化するかを統合的に解析すること)という新しい手法を用いて、酵母中の代謝物質(メタボローム)の流れを改変することで、ビールの品質向上に有効なビール酸化防止効果のある酵母の育種に成功したことを発表した。
発酵によって酵母が生成するビール中の硫黄系化合物は、ビールの香味に大きな影響を与えることが知られている。その物質の1つである亜硫酸は高い抗酸化作用をもち、ビールの鮮度の維持に重要な役割を果たす一方で、硫化水素はビールの硫黄臭の原因物質の1つといわれていることから、硫化水素を減少させ、亜硫酸を増加させる酵母の育種が求められると指摘する。
しかし、亜硫酸と硫化水素は通気や温度などを変えて一方を増減させると、他方も連動して増減するという問題が生じるという。そこで同社は、慶應義塾大学と共同でCE-MS(慶應義塾大学曽我朋義教授らが開発したキャピラリー電気泳動-質量分析計。数千の代謝物質の一斉分析を可能にした分析法)を用いて酵母の代謝物質を網羅的に測定し(メタボローム解析)、酵母細胞内の代謝の流れを調査した結果をもとに、酵母内の代謝物質の流れの改変を行い、亜硫酸の生産量を増加させながら、硫化水素生産量を減少させる酵母の育種を試みたという。
具体的な実験として、硫黄系物質の代謝経路については、ビール酵母と、亜硫酸や硫化水素をほとんど生成しないビール酵母の近縁であるパン酵母でマイクロアレイ解析(1枚のスライドガラス上に数千から数万の遺伝子を異なるスポットとして固定させ、ゲノムスケールですべての遺伝子の発現パターンを解析すること)によって遺伝子量を比較するとともに、メタボローム解析によって代謝物質量で比較したとのこと。
その結果、ビール酵母はパン酵母に比べてアスパラギン酸から代謝される物質の量が極めて少ないことから、硫化水素からホモシステイン(須アミノ酸であるメチオニン生合成における中間物質。アスパラギン酸から代謝される物質と亜硫酸・硫化水素から代謝される物質より合成される)への代謝があまり行われず、その結果、亜硫酸と硫化水素がそのまま細胞内に蓄積することが判明したと説明する。
この分析結果から、硫化水素量を減らすためにはアスパラギン酸から代謝される物質の量を増やせばよいと考え、アスパラギン酸からの代謝される物質量が多く、なおかつ亜硫酸量を増やす株を2種類のアミノ酸類似体(アミノ酸の物性や機能に類似する分子。アミノ酸類似体に対する耐性変異株の中にはアミノ酸の生合成を抑える調節機構を解除するものがある)を用いて選抜したとのこと。その結果、親株に比べて硫化水素生産量を増やさずに亜硫酸生産量が増加した変異株を単離することができ、ビールの酸化防止効果があり、なおかつ硫黄臭の少ないビール酵母の育種に成功したという。
同社は、この成果を今後のビールづくりに活用するとともに、メタボローム解析を核となる技術として位置づけ、酒類、医薬、アグリバイオ、健康・機能性食品といった様々な分野に応用していく考え。
キリンホールディングス=http://www.kirinholdings.co.jp/
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