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2007年08月25日
産総研とメルシャン、活性型ビタミンDを合成する酵素を放線菌から分離・精製することに成功
産業技術総合研究所(以下、産総研)ゲノムファクトリー研究部門遺伝子発現工学研究グループ 田村 具博 研究グループ長は、メルシャン生物資源研究所と共同で、骨粗鬆症の治療薬などにも用いられる活性型ビタミンDを合成する酵素を放線菌から分離・精製することに成功した。
脂溶性ビタミンであるビタミンDは、動物体内では不活性型として合成された後、活性化の過程を経てはじめて機能する。活性型ビタミンDは、骨粗鬆症をはじめカルシウム代謝異常に対する治療薬として使用されているが、主要製造法である化学合成では、製造工程が複雑でかつ収量も低いため非常に高価とのこと。
活性型ビタミンDの生産に利用されている放線菌を対象に、ビタミンDを不活性型から活性型に変換する酵素(ビタミンD水酸化酵素)を探索し、分離・精製に成功。その遺伝子を分離・特定したことで、この酵素の機能を改変することも可能とした。活性型ビタミンDの生産性を飛躍的に高めることができるほか、ビタミンD類をもとにした新規医薬品・医薬中間体の生産も期待される。
ビタミンDは、ヒトをはじめとする高等動物において必須の脂溶性ビタミンとして知られ、食物からの摂取あるいは体内でコレステロールの前駆体から生合成されている。摂取あるいは合成されたビタミンDは不活性型で、肝臓と腎臓で水酸化反応による活性化の過程を経て活性型ビタミンDとなり、はじめて機能する。活性型ビタミンDの生理作用は、カルシウムの吸収促進や代謝促進、細胞分化誘導、免疫調節作用など多岐にわたり、活性型ビタミンDおよびビタミンD類の改変体は骨粗鬆症治療薬、ビタミンD代謝異常による諸症状の治療薬、副甲状腺機能亢進症治療薬、乾癬治療薬などとして使用されている。
骨粗鬆症の患者数は国内で約1000万人、予備軍を含めると2000万人いるといわれ、また乾癬の患者数は世界で1億2500万人と推定されており、うち25%が中等度から重度の患者と考えられているという。このことからも、安価で効率のよい活性型ビタミンDを含むビタミンD類の改変体製造技術の開発が期待されていた。
現在、主に使用されている化学合成による活性型ビタミンDの製造は、コレステロールを原料におよそ20もの製造工程を要し、しかも最終産物である活性型ビタミンDの生産量は原材料の1%程度と少量であり、複雑な製造工程と少量生産によって価格も高価となっている。また、化学合成による製造法は、ビタミンDへの部位選択的な水酸化反応は容易ではないことから、多様なビタミンD類改変体の製造には技術的な問題があるとしている。
一方、化学合成に代わる製造法として微生物による活性型ビタミンD製造が実用化されているとのこと。この微生物は、放線菌の一種で不活性型ビタミンDを活性型ビタミンDへ変換する能力をもつ。この微生物から、活性型ビタミンDへ変換する能力をもつ酵素を分離・精製できれば、活性型ビタミンDの生産性を飛躍的に高めるだけでなく、この酵素の機能を改変することでビタミンD類の水酸化改変体と、それらをもとにした新規医薬品・医薬中間体の生産が期待されるという。
産総研ゲノムファクトリー研究部門遺伝子発現工学研究グループでは、放線菌による化学物質やタンパク質の生産、あるいは有害物質の分解など環境浄化などへ利用できる細胞を構築する研究開発を行ってきた。一方、メルシャンは、微生物を利用した医薬品製造を行っており、とくに微生物由来の酵素、水酸化反応酵素群シトクロムP450を活用した医薬品や医薬中間体の生産技術の開発を進めている。そこで産総研は、メルシャンと共同でビタミンD活性化(水酸化)に関わる酵素(シトクロムP450)の分離とその利用研究に取り組んできたと説明する。
まず、ビタミンDを不活性型から活性型へ変換する能力をもち、実際、活性型ビタミンD製造に使用されているシュードノカルディア属放線菌(Pseudonocardia autotrophica)から、ビタミンDを活性化(水酸化)する酵素を分離・精製し、この酵素のアミノ酸配列をコードしている遺伝子DNAを分離したという。
手順としては、シュードノカルディア属放線菌を培養した後、菌体を破砕し細胞内のタンパク質を回収。回収したタンパク質は多数のタンパク質の混合物であり、目的タンパク質の分離精製は、吸着樹脂を利用してビタミンDの活性型への変換能力を指標として探索を行った。異なる精製吸着樹脂を用いて複数回のステップを経た後、ほかの不純物タンパク質をできるだけ含まない最終物、ビタミンD活性型への変換能力をもつタンパク質(酵素)を分離したとのこと。
精製したタンパク質のアミノ酸配列を解析し、配列情報をもとにこのタンパク質をコードする遺伝子DNAを放線菌ゲノムから分離。得られた遺伝子情報から、データベースによってビタミンDを活性化しているタンパク質は、シトクロムP450群に属する水酸化酵素の一つであることが判明したという。この放線菌からの精製酵素、および遺伝子組み換え大腸菌を用いて生産した酵素ともに、不活性型ビタミンDを活性型ビタミンDへ変換する能力があることが確認されたと説明する。
さらに、この遺伝子を産総研の開発してきたロドコッカス属放線菌(Rhodococcus erythropolis)に導入して、菌体内でビタミンD水酸化酵素を生産・蓄積させると、培養液に添加した不活性型ビタミンDが活性型へと変換されたという。これによって生きた細胞を利用しても、ビタミンDが活性化されることが確認された。
同研究で、分離・取得したビタミンD水酸化酵素とその遺伝子は、精製酵素あるいは生細胞のどちらでも働くため、広範な医薬開発に向けて試験・検討することが可能になったという。
今後、産総研とメルシャンは共同で、活性型ビタミンD3の現行製造プロセスにおいて望まれる活性向上型および副作用除去型酵素の取得を目指す考え。さらに、ビタミンD関連化合物を選択的に水酸化できるその他の酵素取得に向けた情報を収集する。メルシャンでは、この研究成果を利用して、活性型ビタミンDの実生産に使用している放線菌に改良遺伝子を導入して、ビタミンD類の改変体生産系の構築とその高度化を行うとしている。
産業技術総合研究所=http://www.aist.go.jp/
メルシャン=http://www.mercian.co.jp/
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