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2011年09月27日

ケベック・メープル製品生産者協会、メープルシロップに肝機能保護効果があることを確認、研究を手掛けた阿部啓子先生が成果報告

 ケベック・メープル製品生産者協会は、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授/東京大学名誉教授の阿部啓子先生に依頼しているニュートリゲノミクス(遺伝子発現解析)によるメープルシロップの健康機能性を評価する研究において、メープルシロップに肝機能保護効果があることを初めて確認したと発表した。9月12日には、阿部先生がこの研究結果について説明する「カナダ産メープルの機能性-ニュートリゲノミクスに基づく成果報告」が行われた。

 阿部先生の発表に先立ち、ケベック・メープル製品生産者協会 日本販売促進・市場開発担当官のミレーヌ・デニコライ氏が、メープルシロップの概要について紹介してくれた。「カナダでは、メープルシロップの生産が行われる3月下旬から4月初旬にかけての時期を『シュガータイム』と呼び、春の収穫がもたらす喜びを祝っている」と、メープルシロップの生産時期はカナダの人々にとって特別な季節であるという。「カナダは、世界のメープル製品の85%、年間約4万4000トンを生産している。そして、カナダ産メープルの93%がケベック州で生産されている」と、カナダは世界一のメープルシロップ生産量を誇り、そのほとんどをケベック州が担っているとアピールした。

 「メープルシロップは、メープル(カエデ)から採取された樹液で作られる。この樹液は澄んだ水のようにさらさらしていて、ほのかに甘みを含んでおり『メープルウォーター』と呼ばれている。春先の雪解け頃の約20日間のみ、自然に流れ出すので、これを採取して、糖度が66%になるまで時間をかけて煮つめるとメープルシロップが完成する。わずか1リットルのメープルシロップを作るのに、40リットルもの樹液が必要になる」と、デニコライ氏はメープルシロップの生産工程を説明。

 「メープルシロップは、生産工程が同じでも、樹液が採取された時期によって色や風味が異なってくる。早い時期に採取された樹液は淡い色と風味のメープルシロップになり、採取時期が進むにしたがって色と風味が増していく。そして、色と味を基準として、光の透過度やメープル特有の風味などによって、3つのカテゴリーと5つのグレードに分類される」と、メープルシロップの種類とその特徴について解説してくれた。

 「メープルシロップには、カルシウムやマグネシウム、カリウム、亜鉛などのミネラルやビタミン、アミノ酸や有機酸など、健康によいとされる様々な成分が含まれている。それでいて、他の甘味料に比べてエネルギーが低い。さらに、最近の研究では、メープルに含まれる54種類のポリフェノールが特定され、そのうち5種類はメープル特有のものであることがわかった」と、メープルシロップは他の甘味料よりも栄養価が非常に高く、カロリーが低いことも特徴であるとデニコライ氏は強調していた。

 続いて、東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授/東京大学名誉教授の阿部啓子先生が、今回明らかになった「メープルシロップの肝機能保護効果」について研究成果の報告を行った。「ケベック・メープル製品生産者協会との共同研究で、メープルシロップの摂取による健康機能性の解析を2年ほど前からスタートした。それまで、メープルシロップに健康機能性があることは私自身理解しておらず、メープルシロップに関する論文や特許もほとんど出ていない状況だった。一方で、産地であるカナダでは、メープルシロップは健康に良い食品として古くから伝えられてきている。そこで、この共同研究を通して、科学的エビデンスをどうやって出していけばよいのかを考えた」と、メープルシロップにはどんな健康機能性があるのかゼロから研究を開始したと阿部先生は当時を振り返る。

 「実際の試験では、メープルシロップを摂取した際、体にどのような健康効果を及ぼすのか調べるため、ラットを使った動物実験を行った。濃度20%のメープルシロップを含む餌と、同じ濃度の砂糖水溶液を含む餌を11日間ラットに投与し、血中成分を解析する生理・生化学データ解析と、ニュートリゲノミクスの両方において評価した」と、ラットを使った動物実験による試験的研究を実施したとのこと。

 
 「まず、血中成分の29項目を解析したところ、メープルシロップ食を与えた群では、砂糖水溶液食を与えた群に比べて、肝機能障害の程度を評価するバイオマーカーである血清酵素AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素)の活性が有意に減少した」と、メープルシロップの摂取によって肝機能を良い状態に保つ効果があることが血液検査で明らかになったと研究成果について解説。「さらに、その理由について、肝臓の遺伝子発現を解析するニュートリゲノミクスで調べた結果、メープルシロップがアミノ酸代謝に関わる遺伝子を減少させることで、臓器に障害を与えるアンモニアの生成を抑制していることが推定された」と、ニュートリゲノミクスによってメープルシロップがもたらす肝臓保護効果の理由の1つが示されたと述べていた。

 最後に阿部先生は、「今回の研究成果は、メープルシロップのもつ健康効果の一端にすぎないと考えている。今後も研究を続けて、メープルシロップの摂取による健康機能性をさらに追求していきたい」と、これからもメープルシロップの健康機能性の研究に力を注いでいくと意欲を見せた。

 阿部先生による研究成果報告が終わった後には、管理栄養士の安中千絵氏から「メープルシロップの機能性と食生活への取り入れ方」についてレクチャーがあった。「メープルシロップは、抗酸化作用をもつポリフェノールが多く含まれていることから、今回確認された肝臓機能の保護作用に加え、抗がん作用、抗菌作用、メタボリックシンドロームや糖尿病を予防する作用などにも期待されている。また、日本人に不足しがちなカルシウム、カリウム、マグネシウムといったミネラルを豊富に含んでいる点もメープルシロップの機能性のポイント。とくに、小魚や豆、ナッツ、きのこ、海藻、乳製品とメープルシロップを合わせたレシピがおすすめ」と、ミネラルが不足しがちな日本人こそメープルシロップを積極的に食生活に取り入れるべきと提言する。

 「メープルシロップはどんな食材とも相性が良く、しょう油やみそ、ゴマなど和の食材との相性も抜群。うまみが増して、味に奥行きが出てくる。また、溶かす手間が必要なく、すぐに素材に馴染むので手軽に使うことができる。これに加えて、とても安心・安全な食材なので、おいしさと健康、そして安心のためにも、ぜひメープルシロップを様々なレシピに取り入れていって欲しい」と、健康機能性だけでなく、手軽に使えて料理をおいしく仕上げられるのもメープルシロップの魅力であると話していた。

ケベック・メープル製品生産者協会=http://www.pure-maple.com/

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