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2008年10月21日
富士経済、高齢者向け食品・食材や介護食品の市場調査、08年は1兆5902億円の見込み
富士経済は、すでに高齢社会となっている日本の高齢者向け食品の小売、卸、施設(病院、高齢者福祉施設等)、給食、宅配における動向と食材及び介護食品市場について調査を実施した。その結果、2008年の高齢者施設向け食材市場、病者・介護食市場、宅配・配食サービス市場の合計は1兆5902億円(前年比1.5%増)の見込みとなった。介護食市場は、ソフト・ムース食、水分・栄養補給型食が拡大し、前年比18.2%増の127億円の見込みとなっている。なお、詳細を調査報告書「シルバーフード・フードサービスの徹底解明」にまとめた。2年前の2006年に「シルバー&シニアフードチャネルの徹底解明」として調査結果をまとめているが、今回の調査では、小売・宅配・施設ルートの流通に加え食材及び介護食品にまで対象を拡大し、分析を行った。
高齢になるにしたがい、のどの渇きを感じにくくなる(口渇感度の低下)、腎臓の機能が低下し老廃物を排出するのに若齢時より多くの水分が必要になる、水分を蓄える筋肉が少なくなるといった変化が現れ、慢性的に水分不足の危険にさらされる恐れが出てくる。また、食が細くなるとともに、咀嚼・嚥下困難になると食事から充分な栄養素を摂取しにくくなる。水分・栄養不足は、脱水症状や病気の回復の遅れ、寝たきりの場合は褥瘡(床ずれ)を引き起こす恐れもある。そのため、介護の現場では水分補給と栄養補給が重要視され、とろみ剤やゲル化剤を使用したお茶などで水分補給を図ったり、錠剤が飲み込めない場合にはビタミン剤などを砕いておかゆに混ぜたり、ゼリーにして摂取させるなどの対処がなされている。
しかし、3度の食事では喫食率が低く栄養補給が十分ではなく、介護スタッフの人手不足、あるいは人件費削減要請などの要因から、効率的に水分・栄養補給ができる加工食品の需要が高まっている。水分・栄養補給商品として、アイソトニック飲料、ゼリー飲料、ゼリー、ムース、アイスクリームなど3度の食事以外でも補給できる商品が増加しており、厚生労働省では、特別用途食品の分類表示に関して高齢者食品の対象見直しを進めている。単なる「そしゃく困難者用食品」を許可の対象から外すとともに、「えん下困難者用食品」への変更を検討している。これによって、咀嚼困難と嚥下困難を明確に区分し、嚥下困難者が適切な商品を選択できるように変わるとみられ、病院や施設に限定されている市場は在宅介護向けにも拡大していくと考えられる。
水分補給に関しては、施設内、家庭内でとろみ剤、ゲル化剤を使用することで手作りが容易になっており、水分補給型商品と競合関係にある。ただし、在宅介護における潜在需要は高いとみられ、嚥下開始食としてゼリータイプの需要が拡大していくと考えられる。高齢者は一般の健常者と同じように毎日の食事から充分な栄養素を摂り入れることは難しいことから、栄養補給型商品は今後さらに需要が拡大するとみられる。現在、常温カップのゼリーやブリックパック商品が多いが、カップのフィルムを剥しにくい、ブリックパックからストローで吸い込みにくいなど、介護食品の容器に不満が聞かれるようになっている。今後はユニバーサルデザインがますます重要となってくる。
厚生労働省は2006年4月から有料老人ホームの規定を緩和し、人数要件(10人以上)を撤廃するとともに、食事、生活介護、家事、健康管理のいずれかのサービスを提供していれば有料老人ホームに該当することにした。そのため、いわゆる「無届有料老人ホーム」である無許可・無届の高齢者施設がなくなるようになり、2006年は登録施設数が急速に伸びた。2007年4月に医療法人の参入が解禁されたことから、また2012年までに廃止される介護療養型病床の受け皿として、有料老人ホームの拡大が予測される。ただし、有料老人ホームではなく高齢者専用賃貸住宅を運営する事業者も増加しており、介護サービス付の高齢者専用賃貸住宅と競合していくことが考えられる。
有料老人ホームでは、入居者の楽しみは美味しい食事であり、施設側も食事内容を顧客の獲得材料にしている。食費は施設ごとに自由に設定でき介護報酬に左右されないために利益を出しやすく、また病院給食ほどの厳しい食事制限をする必要のない人が多いために給食事業者も注力している分野である。一方では、セントラルキッチンでの調理済加工や外部加工工場への調理済食品製造委託で、施設内厨房での作業を再加熱などの簡易調理にとどめ、食費を1食400円~450円程度に安く設定して、利用者の負担を低くする施設も出て来ている。また、有料老人ホームでは、通常の食事を楽しめる利用者が多いことから、イベント食や施設内でレストランの味を楽しめる移動レストランなどを実施する施設もある。普段よりおしゃれやお化粧をして参加する利用者が多く、心のケアにもなっている。
高齢者専用賃貸住宅は施設数の伸びこそ大きいものの、食事サービス比率が60%強ほどであること、施設が契約している食事形態での喫食率が低いこと、厨房調理ではなく弁当配食サービスを受けているケースが多いことから、食材市場は非常に小さいものとなっている。しかし、高齢者専用住宅でも食事サービス付き施設が年々増加しており、何らかの食事サービス需要があるため、配食・給食サービス業者にとっては有料老人ホームとともに有望チャネルとなっている。
病者・介護食市場は、商品バリエーションの多様化や品質強化、さらに需要の裾野の広がりなどにより年々拡大している。特に、在宅介護における将来性に注目が集まっており、利用者の使いやすさに加えて、用途や適性などが分かりやすいことが重要な要素となっている。市場の50%近くを占める流動食は在宅における小量サイズの使用拡大など需要層の拡大が見込まれる。
介護食は、キザミ・ミキサー食、ソフト・ムース食、水分・栄養補給、菓子・デザートからなり、特にソフト・ムース食が施設での利用を中心に増加している。施設では、おやつが必ず提供されており、厨房内で自家調理するケースも多いが、近年は調理スタッフ不足、人件費削減によっておやつを既製品で済ませたいと考える施設が増加している。そのため、容量が少なく、咀嚼・嚥下に配慮してあり、栄養素を添加している高齢者専用の菓子・デザートが増加している。2008年の介護食市場は前年比18.2%増の127億円と見込まれる。とろみ調整剤・ゲル化剤は、施設に加えて在宅需要の拡大が見込まれており、無味・無臭や粘性の安定化、さらに温度帯を限定しないとろみ付けなど品質強化が進んでいる。ゲル化機能についても様々な商品開発が進んでいる。
食材宅配は前期高齢者の利用者が多く、完成食宅配は後期高齢者の利用者が多くなっている。高齢者のライフスタイルは、健康状態によって大きく異なり、独居か同居かといった生活環境にも大きく影響を受ける。食材宅配の場合、ヘルシータイプでは、1人分からのコース設定となっていることが多いが、コースの主流がファミリー向けということもあり、2人分からが多く独居の高齢者では利用できず、高齢者にとってヘルシータイプ以外のコースを選択できないケースがでてくる。
完成食宅配の場合は、1人分からの注文が可能であり、高齢者にとって調理の必要が無く、栄養のバランスがとれている完成食宅配の潜在的需要は大きいと考えられる。しかし、経済性という観点では食材宅配ほどのメリットが見いだせない。低価格を実現して実績を急拡大している事業者もあることから、低価格化は重要な要素となる。今後は、単なる低価格ではなく、食材の購入やメニュー決定、調理作業の時間といった調理に関わる時間・作業を経済価値に換算した場合のメリットを訴求していくことがさらに必要となる。また、カロリーコントロールやライフスタイル、健康状態に合わせた、それぞれのメニューや配送形態、サービス内容などを個別にアレンジする仕組みを作ることで、アクティブシルバーを含めたより広い範囲の高齢者の利用の可能性がでてくる。
[小売価格]
A4判 287頁:13万6500円(税込)
富士経済=http://www.group.fuji-keizai.co.jp/
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